発売は1983年。
時代はMTV全盛。
コマーシャルな楽曲とキャッチーな映像、映画のサントラとのカップリング。
SEX PISTOLSのジョニー・ロットンが「ロックは死んだ」と言ってから5年。
1980年リリースの「BOY」、1981年リリースの「アイリッシュ・オクトーバー」に続く3枚目のアルバム、それがこの「WAR」でした。
3曲目のNew Years Dayの大ヒットで一躍「時代のバンド」になりました。
魂満載のボノのヴォーカルの力はもちろんですが、サウンドワークにもポイントがあります。
最初に述べた様に、時代はMTVな80年代。
でもそんな(ベトナムを忘れたい)ハッピーなアメリカとは正反対に、ポーランドでは民主化運動が激化したり、東西冷戦は相変わらずだったりしていました。
(意外でしょうが、今でもアメリカのジジババやおっさんおばさんはレーガンが好きだったりします)
その中でこの作品は音による「世界観」をきちんと提示しています。
寒く、乾いた、ヨーロッパでも虐げられている「アイルランド」の街の空気。
ドラムの処理、ギターのサウンド及びアプローチは完全にオリジナルではありませんが、バンドの出したい世界観と見事にマッチしております。
(エコー&ザ・バニーメンの影響は大きいと思います)
全くファットではないサウンド、いわゆるブルースやハードロックの流れを全く感じないギタープレイなのに、ちゃんと「ロック」を感じる事が出来るというのは、プロデューサーのスティーヴ・リリーホワイトのディレクション能力が高かったからでしょう。
きっと「今まで大したセールス出てないんだから、時代に合わせてもっとMTVなサウンドにしろよ!」とか言われた事でしょう。
もしそこで、周りに合わせていたら、この「WAR」は生まれていなかった、そして今のU2は無かった事でしょう。
今の時代、1980年当時よりも、もっと音楽の行き先が不透明な時代です。
みなさん、是非自信を持って「自分達の音楽」を作ってください。
そんな皆さんを心から応援したいと、常に思っております。
コメント