「果たして自分はちゃんと聴こえているのだろうか?」
個人レベルで制作されている方だけでなく、レコーデイングスタジオや放送局の方でも、悩んでいる方は相当多いです!
私のところにもプロの方々から、たくさんご相談&チューニングのご依頼を頂きます。
そこで今回は、私が行なっているモニター調整のちょっとしたポイントを、皆様にお伝えします♪
注意!:この記事は「音楽を作るひとたち」に向けて書いた記事です。
音楽を聞くのが趣味の方々には全く役に立ちませんのでご了承ください(汗!)
一番大事なのは「低音の解像度」
低音域は指向性が緩い反面、空気を動かすエネルギーがとても大きいです。
ライブ会場でスピーカーの前にいると、低い音がドンドン鳴ると、体に風を感じます。
でも高い音では風を感じないですよね?
レコーディングや自宅などのモニタールームでも、原理は同じです。
今回お伝えするチューニングのキモは、
低音を消すのではなく、部屋中に綺麗に流れるように調整する。
という観点でお話します。
それでは図を使って説明していきますね〜
解説に入る前に、私が普段調整に使う楽曲を幾つかご紹介します。(by Amazon music)
おすすめリファレンス楽曲
[Rosanna – TOTO]
グラミー録音関係の賞を総ナメにした楽曲。レベルは小さめですが、バランスは完璧だと思います。
[Stupid Me – MAGIC!]
全体に対する低音のレベルバランスを見る際に使用します。
この曲のキックとベースがボワっとしないように調整すれば大丈夫です。
[Beach boys – Wouldn’t It Be Nice ]
モノラルチェック用の楽曲。
[Love Me Do – The Beatles]
モノラルチェック用の楽曲です。
[Easy- Sheryl Crow]
最終仕上げは、この曲で確認します。
低音を聴きながら、設置ポイントを探しましょう。
上の図をもとに、順に解説します♪
1:壁との距離を調整しましょう。
レコーディングスタジオだと、スピーカーと背面壁やガラスとの距離が離れていますが、自宅スタジオの場合だと、近接していることの方が多いです。
制約は多いでしょうが、まずは可能な範囲で距離を取って調整してみてください。
また部屋の角などは空気が対流しずらいので、板や物(ギターケースでもオッケー)を置いてみてください。
2:スピーカー本体の向きを調整します。
よく「二等辺三角形の頂点が正義」と思われがちですが、今回はその点にあんまり神経質にならないで大丈夫です♪
まずはリスニングポイントに正対するように設置します。
そしてそこから外に開くように調整します。
開きすぎて、ポイントが掴みにくくなるところがあります。
一度そこまで開いてから内側に調整するとわかりやすいと思います。
ここで注意したいのは、できるだけ内側に向きすぎないように気をつけてください。
左右の再生音が干渉して、高域が歪んだり、歌の辺りがモコモコしちゃいます。
3:モノラル音源を再生し、左右の関係を調整します。
実は横の広がりが大きいステレオ音源より、モノラル音源の方がわかりやすいです。
ある程度決めて設置後、ご自身で聞くポイントを体を移動させながら楽曲を聞いてみてください。
ビシッと真ん中が合うポイントで聞いてみると、各楽器や歌などの歪みが減少し、とってもクリアーに聞こえます。
この時、実は三角形の頂点では無い事が多々あります。
でも作業で大切なのは「どこで聞くか?」よりも「的確にちゃんと聴こえるか?」なので、気にしなくて大丈夫です♪
その後、最新の綺麗な音源を再生してみましょう。
歌やキックのセンター感や、左右の広がりなど、最初と違っていると思います。
ポイントは、低域にアプローチし、高い帯域の変化を確認すること
冒頭に述べましたように、低音域が空気を動かす量はとても大きいです。
上記3点のポイントを調整する際に、ぜひ低音域以外の帯域がどのように変化するのかも、あわせてチェックしてみてください。
例えばハイハットの艶やニュアンスとか
例えば歌のコモリ具合とか
その2点だけでも変化を感じていただければ嬉しいです!
イコライジングは根本を解決できるわけでは無い
再生環境が悪いままイコライジングしても、それで根本が解決できた訳ではありません。
位相干渉が原因で、特定の周波数に問題が出ていて、そこをEQで調整しても、音は決して前に飛びません。
むしろさらに平面的な再生環境に陥ることも多々あります。
RTAでの計測はまずは目安程度に考え、まるでミックスダウンやマスタリング作業の時のように、ご自身の耳と感受性を信じてトライしてみましょう。
実はスピーカーのサイズも大事なポイントです。
ここまで読んでいただけると、低音域の調整が大事であることを理解していただけたのではないでしょうか?
実は部屋のサイズとスピーカーの大きさは、密接な関係にあります。
立派なコントロールルームの部屋で、小さなスピーカーを使用すると、部屋全体の空気を動かす事が難しくなります。
逆に4.5畳から8畳ほどの部屋で、大きなスピーカーを使用すると、低域が暴れてしまいます。
例えて言えば、ストレートの長いサーキットなら、大排気量の車の方が速く走れます。
逆に駅前の路地や、道幅の狭い、コーナーの連続する峠の下りなら、コンパクトな車の方が好結果を出せる。
スピーカーと部屋の関係も同じです。
高額なハードウェアやプラグインを買い揃えるのはとてもワクワクするのは理解できます。
でもその前に、今一度ご自身のモニター環境を見直してみてはいかがでしょう?
きっと今まで聴いていた楽曲の素晴らしさを再認識出来ます!
「ああ、音楽って、ほんとうに素敵だなぁ〜♡」
この記事がきっかけで、そう思って頂けたら、めちゃくちゃ嬉しいです!
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